宮崎の畜産・食品加工の会社が、AIで最初に減らせる事務仕事

2026-08-26 執筆: 今長 学(Exist Japan株式会社 代表取締役)

AIの話になると、どうしても「画像で牛の状態を判定する」「センサーのデータで異常を検知する」といった話から始まりがちです。将来的にはそうなるでしょう。

ただ、宮崎の畜産・食品加工の会社を実際に見ていくと、もっと手前に、いますぐ減らせる仕事が大量に残っています。 事務です。

この記事では、畜産と食品加工の現場で発生している書類を具体名で挙げながら、どこからAIに任せられるのかを整理します。

宮崎の主役は、畜産と食品加工です

まず数字を確認しておきます。

農業

令和5年の農業産出額は3,720億円で全国第6位。そのうち**畜産が2,483億円と県全体の66.7%**を占め、畜産部門として過去最高額を記録しました。部門別の全国順位は、鶏が2位、豚が3位、肉用牛が3位です。

出典:宮崎県/農林水産省 生産農業所得統計

製造業

県内の製造業は1,289事業所・従業者54,522人、製造品出荷額等は18,138億円(令和6年経済構造実態調査)。そして事業所数・従業者数・出荷額・付加価値額のすべてで、食料品の占める割合が最も多いという構造です。

つまり宮崎の産業は、畜産で育てて、食品にして出す。この2つが県の主役だということです。

そして、人は減ります

宮崎県のデジタル化推進計画は、県内の生産年齢人口が2020年の約58万人から2040年には45万人まで減ると見込んでいます。

出典:宮崎県デジタル化推進計画(みやざきDXプラン)

人が減ることが分かっているなら、いまいる人の手を空けるしかありません。そして手を空けやすいのは、現場作業ではなく事務です。

AIに向く仕事の見分け方は、ひとつだけ

難しい判断は要りません。基準はこの一言で足ります。

毎年(毎月)同じような書類を、毎回ゼロから書いていないか

| AIが得意 | AIが苦手 | |---|---| | 型が決まっている文章を、中身を変えて何度も書く | その場の判断が要る交渉ごと | | 同じ情報を、相手ごとに書き分ける | 現物を見ないと分からない品質判断 | | 長い資料から要点を抜き出す | 責任を伴う最終確認 | | バラバラの書き方を、ひとつの型にそろえる | 未公開の社内数字の計算そのもの |

「毎回ゼロから書いている」書類は、すでに過去の完成品が社内にあります。 それをAIに読ませて、今回の条件だけ差し替える。これが一番早く、一番失敗しません。

畜産の会社が、最初に減らせる書類

1. 補助事業の申請書類

事業計画書、実施計画書、実績報告書。畜産の会社ほど、公的な補助事業に関わる書類が多く発生します。

これらは毎年、様式がほぼ同じです。にもかかわらず、担当者が毎回白紙から書き起こしていることが多い。昨年度の申請書と今年度の様式を渡し、変わった条件だけ伝えて下書きをつくらせる。これだけで、担当者の作業は「書く」から「直す」に変わります。

書く作業と直す作業では、かかる時間がまるで違います。

2. 記録様式づくり

飼養衛生管理に関する記録、GAP・HACCP関連の記録様式、作業日誌。

ここでAIが効くのは記録そのものではなく、様式をつくる作業です。「この項目を毎日記録できる表をつくりたい」「記入例も一緒につけたい」という段階でAIに任せると、たたき台が数分で出ます。あとは現場に合わせて削るだけです。

記入例と注意書きが最初からついている様式は、新人が入ったときの教える時間も減らします。

3. 取引先・関係先への案内文

出荷スケジュールの連絡、価格改定のお知らせ、休業のご案内、繁忙期の納期についてのお願い。

同じ内容を、相手によって言い回しを変える必要がある文書です。これはAIが最も得意とするところで、要点を箇条書きで渡せば、丁寧な文面が何通りでも出てきます。

4. 求人票と募集の文面

人手が減っていく前提の中で、求人票の質は直接効いてきます。仕事内容を具体的に書き、応募者の不安に先回りして答える。この書き直しをAIに何案か出させて、一番いいものを選ぶという進め方が有効です。

食品加工の会社が、最初に減らせる書類

1. 商品ラベルの表示文言

まず先に注意点を申し上げます。食品表示法で定められた一括表示の部分(原材料名・添加物・アレルゲン・内容量・賞味期限・保存方法など)は、AIの出力をそのまま使ってはいけません。 ここは必ず人が確認し、必要なら専門機関に確認してください。

AIが役に立つのは、その周りの説明文・キャッチコピー・裏面の商品説明です。原材料や製法の情報を一度渡しておけば、「贈答向け」「日常使い向け」「観光客向け」と切り口を変えた文案が何通りでも出てきます。

2. バイヤー向けの提案資料・商談シート

同じ商品でも、量販店に出すのか、専門店に出すのか、飲食店に出すのかで、伝えるべき点は変わります。

商品の情報は1つ、書き分けは何通りも。 この構造がAIと相性がいちばん良い仕事です。商談前日に「この取引先向けに整えて」と指示すれば、要点を並べ替えた資料が短時間で出ます。

3. EC・通販の商品説明文

自社サイト、モール、ふるさと納税のページ。同じ商品を媒体ごとに書き分ける作業は、担当者の時間を大量に食っています。文字数制限に合わせて縮める作業も含めて、AIに任せられます。

4. 展示会の説明パネルと同梱リーフレット

展示会が決まってから慌ててつくることになりがちな資料です。商品情報を渡してたたき台を出させ、現場で削る。ゼロからつくらないというだけで、準備の負担は大きく下がります。

5. 作業手順書・社内教育資料

ベテランの頭の中にしかない手順を、聞き取ったメモから文書に起こす作業。箇条書きのメモをAIに渡して手順書の形に整えさせると、これまで「時間がなくて書けない」と言われ続けてきた文書が、実際にできあがります。

「まだ約5割」という数字が意味すること

宮崎県が令和5年に473社へ行った調査に、こういう結果があります。

既にデジタル化の取組を進めている事業者は、従業員規模が101人以上の事業者で80%以上を占めるものの、それ以下の従業員規模の事業者では概ね50%程度

出典:宮崎県 デジタル化の対応に関する調査(令和5年・n=473)

従業員100人以下の会社では、約半分がまだ着手していないということです。畜産・食品加工には、この規模の会社が数多くあります。

これは遅れているという話ではありません。手をつければ減る仕事が、まだ丸ごと残っているという話です。しかも人数が少ない会社は、決めれば翌日から変えられます。稟議と部門調整で半年かかる大企業より、効果が出るのはむしろ早い。

最初の90日、こう進めます

| 時期 | やること | |---|---| | 1〜2週目 | 事務で時間を食っている書類を、名前を挙げて10個書き出す | | 3〜4週目 | そのうち「毎回ゼロから書いている」ものを3つ選ぶ | | 2か月目 | 過去の完成品をAIに読ませ、その3つを実際につくってみる | | 3か月目 | うまくいった指示文を共有フォルダに貯め、他の人に渡す |

大事なのは最初から全部やろうとしないことです。3つに絞って、確実に減らす。減った実感が社内に出れば、次は勝手に広がります。

費用をかける前に、無料の窓口があります

いきなり有料の研修を検討する必要はありません。宮崎県内には無料で相談できる窓口があります。

  • 産業DXサポートセンター(080-2121-3841・平日9〜17時):宮崎県情報産業協会が実施するDX専門の無料相談窓口。Zoom面談・LINE相談にも対応(https://www.dx-miyazaki.com/
  • 宮崎県よろず支援拠点(0985-74-0786):相談回数の制限なし、何度でも無料(https://yorozu-miyazaki.go.jp/
  • みやざきDXけん引人材育成事業:受講料無料の県の育成事業(公式ページ

研修の費用については、国の人材開発支援助成金が使える場合があります。窓口は宮崎労働局助成金センター(0985-62-3125・事前予約制)で、訓練開始前に計画届を出す必要があります。 日程を決める前にご確認ください。

出典:宮崎労働局

県の産業DX推進事業費補助金は令和8年度の受付が終了しており、次年度の公募待ちです。来年度に向けて動くなら、いまのうちに「どの業務をどれだけ短縮するか」を数字で整理しておくと、申請の準備が進みます。

出典:宮崎県 令和8年度 産業DX推進事業費補助金

まとめ

  • 宮崎の産業の主役は畜産(産出額の66.7%)と食料品製造業です
  • AIで最初に減るのは現場作業ではなく事務、それも「毎回ゼロから書いている書類」です
  • 畜産なら補助事業の申請書類・記録様式・取引先への案内文、食品加工なら商品説明・提案資料・EC文面から
  • 食品表示法に関わる一括表示は、必ず人が確認してください
  • まずは無料の相談窓口へ。それで足りなければ、自社向けの講座を検討する順番です

当社(Exist Japan株式会社)では、御社が実際に使っている書類を持ち込んでいただき、その場でつくるところまでやる形の講座を提供しています。開催はオンラインが基本で、対面をご希望の場合は宮崎県内へ出張します。


※本記事の制度内容は2026年8月26日時点で各公式ページに掲載されていた内容です。募集状況・要件は変更されることがありますので、申し込み前に必ず公式ページでご確認ください。

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この記事の著者: 今長 学(いまなが まなぶ)

Exist Japan株式会社 代表取締役。経産省認定 経営革新等認定支援機関、大分県中小企業アドバイザー。生成AIビジネス活用研修 受講者累計500名以上、登壇200回以上。中小企業のAI活用とマーケティングを支援。→ プロフィール詳細

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